研究活動

  日本透析医学会学術集会・総会
 2015.6 透析通信システムFNW+導入における問題点
 2013.6 院内で普通救命講習会を開催して
 2012.6 ・炭酸ランタンの粉砕化による高リン血症治療への効果
・avgにおける静的静脈圧の測定
 2011.6 ・コンソール汚染時に対する当院の取組み
・自動化透析装置導入後、新人研修を経験して
 2010.6 ・漢方(四物湯類)は維持透析患者のエリスロポエチン製剤使用量を減らす
・夜間RO自動消毒システムを用いた清浄化対策
 
 2009.6 ・穿刺ミスデータからわかること
・自動プライミング/返血機能を持つ東レ社製透析監視装置
 TR-3000Mの使用経験
 2008.6  東レ・メディカル社製HDFフィルタTDF2.0の臨床性能評価
 2007.6 ・RO水の電導度が上昇した例
 2006.6  ニードルレス血液回路の長期使用報告
 2002.7  自作ETCFフラッシング機構設置と使用経験
 2001.6  透析後採血方法の検討
 2000.6 ・透析時間の違いがkt/Vに及ぼす影響について
・ヘマサイト長期使用の一症例
・当クリニックにおけるHCV抗体陽性透析患者の検討
  その他の学術集会
 2014.5 無線LAN環境下でのWindows8搭載タブレットPCを用いたME機器管理の試み
 2012.5
 第22回日本臨床工学会
・ユビキタスモジュールを利用した警報送信システム
 2010.5
 第20回日本臨床工学会
東レ社製RO装置 TW−HI極低濃度薬液封入システムの使用経験 
 2005.2 HDF研究会  供給水管理におけるFI値の有用性

第60回 日本透析医学会学術集会・総会(2015.6) 横浜

透析通信システムFNW+導入における問題点

医療法人 永光会 相模原クリニック
○小堀譲也、野々山直之、荻野剛、梅澤俊明、銅谷博美、佐藤貴宣、山田彩、野田雅顕、喜多村晃仁、石頭郁美、廣瀬隆司、高橋克幸、鎌田智宏、田崎尋美、巽洋、永岡隆


【目的】当院は2014年9月に FutureNetWeb+(以下FNW)を導入した。運用に至るまでに 経験した問題点とその対策について報告する。

【方法】導入に際し、マスタ設定や帳票作成は臨床工学技士3名、患者情報や透析予定の入力等は各部署で分担しスタッフ全体で行った。また、 状況報告や情報共有を目的として定期的にカンファレンスを行った。

【結果】導入前は透析予定を設定した後に編集不可となるマスタ項目もあり、その都度、全予定を削除する必要があったが、マスタ設定後は他に大きな問題は発生しなかった。導入後はマスタの設定を必要とする問題は少なく、透析装置による入力項目の変更など、運用に関する設定変更が多かった。

【まとめ】FNW導入期の問題点は、初期の設定で当院の運用に係わる事柄が多く、頻回に設定変更を要した。円滑にシステムを導入する上で、事前の綿密な計画とスタッフ間の情報共有が重要であった。

第24回 日本臨床工学会(2014.5) 仙台

無線LAN環境下でのWindows8搭載タブレットPCを用いたME機器管理の試み

   第24回 日本臨床工学会
      JACE Best Presentation Award BPA2014
              若手奨励賞(手術室・評価部門) 受賞


医療法人 永光会 相模原クリニック 第二相模原クリニック
○小堀譲也、野々山直之、荻野剛、梅澤俊明、銅谷博美、佐藤貴宣、山田彩、野田雅顕、喜多村晃仁、石頭郁美、廣瀬隆司、高橋克幸、鎌田智宏、田崎尋美、永岡隆

【目的】ME機器管理業務を行っていく中で、年々ME機器の種類が増加してきた。それに伴い、管理に必要な点検記録や、修理記録、マニュアル、添付文書などの資料も増加してきた。そこで当院では、これまでの紙媒体によるME機器管理を電子化し、データベースによるME機器管理システムを構築し、無線LAN環境下で効率的な運用をするためにタブレットPCの活用を試みたので報告する。

【方法】今回のシステムは、デスクトップPCを親機とし、端末に2台のWindows8搭載タブレットPCを用いて構築し、無線LANにて接続した。無線LAN環境は、セキュリティを考慮しWPSにより暗号化し、また、Internet環境から隔絶させた。点検記録や修理記録はFileMakerにて独自に構築したME機器管理用データベースを共有し、現場での直接入力を可能とした。マニュアルや添付文書はPDFによる閲覧を可能とした。書換えや消去等を防止する目的で、記録のPDF保存を原則化し、ファイルの外付けHDDへの自動バックアップ、修正履歴の詳細を保存するシステムを作成した。

【結果】資料の電子化により情報の劣化を抑える事ができ、また、FileMakerの高いカスタム性により当院での使用法に合わせたデータベースを作成出来た。現場でのデータ入力や資料閲覧が一元化された事により、業務の簡便化および効率化ができたが、タブレットPCの取扱い方法などを指導する必要があった。無線LAN環境下での使用に関して、システム構築当初に懸念されていた安定した通信環境の確立は、安価な無線LANルーターの使用でも透析室内全域をカバーできた。使用する端末はOSにWindows8を選択したため、親機との互換性の問題はなく、また、タッチパネル操作に特化したUIを採用しているため、操作に対するストレスは少なかったが、精密機械を持ち歩く事に対してのストレスは感じられた。実際に使用して、多くのメリットがあった半面、多くのデメリットも顕在化したが、このデメリットは、抽出し対策を練る事でシステムの更なる発展に繋がるものであった。

【まとめと考察】タブレットPCの携帯性、Windows8の互換性・UI、そしてFileMakerのデータベース・カスタム性の相性は非常に良く、無線LAN環境下でもセキュリティ上問題なく動作した。今後は、使用端末に搭載されたカメラ機能を活用して、修理状況保存やバーコード管理など、システム改良を重ね、より効率的で汎用性の高いシステムを完成させていきたい。


■第58回 日本透析医学会学術集会・総会(2013.6) 福岡

院内で普通救命講習会を開催して

第二相模原クリニック、相模原クリニック
○野々山 直之,廣瀬 隆司,相坂 久美子,笹原 美代子,浅原 知子,常盤 幸子,梅澤 俊明,銅谷 博美,小堀 譲也,佐藤 貴宣,山田 彩,荻野 剛,野田 雅顕,喜多村 晃仁,石頭 郁美,高橋 克幸,鎌田 智宏,盛本 ちえ子,巽 洋,永岡 隆

【はじめに】透析患者の高齢化や心血管障害の増加に伴い, 透析中に心肺蘇生に至る危険性が増しているが, 救急処置時に透析クリニックでは限られたスタッフ数で対応しなければならない. そこで普通救命講習会を相模原市防災協会へ依頼し, 全職員への救急処置の教育として院内で開催した.

【方法】講習会は講義の後, 心肺蘇生とAEDの実施講習を3回繰り返し行った. 後日, アンケート調査を行った.

【結果】アンケートから, 実施講習の印象と有用性の評価は5段階評価で平均4.6, 4.7と高かった. 難度については3.1で医療スタッフと他職種を比較しても差はなかった. 今後の講習会運営に関しては, 全職員が定期的な開催を望んでいた.

【まとめ】普通救命講習会は誰でも受講でき, 全職員が受講することで救急処置に厚みが増すと考えられた.



■第57回 日本透析医学会学術集会・総会(2012.6) 札幌

炭酸ランタンの粉砕化による高リン血症治療への効果

相模原クリニック看護課, 相模原クリニック
○鈴木 秀美, 増田 広美, 山村 亜希子, 斉藤 朝子, 三上 薫, 須川 千夏, 柳沼 由美, 盛本 ちえ子, 田崎 尋美, 永岡 隆

【背景・目的】炭酸ランタンにより高P血症の治療の幅は広がったが,チュアブル錠であるため年令,口腔内環境が服用状況に影響する可能性が考えられた.今回,炭酸ランタンの粉砕血清P値管理改善を図り,服薬状況に関して聞き取り調査を行ったので報告する.

【方法】炭酸ランタンを内服中にもかかわらず血清P値が6.0mg/dl以上であるか,炭酸ランタンの咀嚼が困難である症例27例(平均年齢56.7±2.5歳,男性14人,女性13人)に対し炭酸ランタンの粉砕投与を行った.投与後の血清P値の観察および,口腔内環境や飲みやすさ等に関して聞き取り調査を行った.

【結果】血清P値は6.7±0.2mg/dlから1か月後には5.0±0.2mg/dlと有意に低下した.

【結論】炭酸ランタンの粉砕は血清P値コントロールに有効であった.内服が困難な薬剤も,服薬指導と処方工夫によりアドヒアランスの向上が図れた.


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avgにおける静的静脈圧の測定

相模原クリニック
○佐藤 貴宣, 喜多村 晃仁, 梅沢 俊明, 銅谷 博美, 小堀 譲也, 山田 彩, 荻野 剛, 野田 雅顕, 石頭 郁美, 廣瀬 隆司, 高橋 克幸, 野々山 直之, 鎌田 智宏, 田崎 尋美, 巽 洋, 永岡 隆

【目的】 AVGはAVFと比べ狭窄や閉塞のリスクが高く,VA管理の向上が必要とされる.当院ではバスキュラーアクセスガイドライン(以下VAGL)で推奨している静的静脈圧(以下SVP)測定を導入し,VA管理の有用性を検討した.

【対象・方法】 当院の維持透析患者でAVGを有する7名を対象とした.SVPはVAGLの方法を用いて測定し,経時的な変化による有意狭窄の有無についてVAエコーで形態・機能検査を行った.

【結果・考察】 定期的にPTAを施行している5名の内,4名はSVPが30mmHg以上で有意狭窄を認めた.しかし,残り1名は最大70mmHgまで上昇し,40mmHg以上で有意狭窄を認めた.よってSVPをVA管理に用いる場合,患者ごとにアクションレベルを設ける必要がある. また,PTAを1年以上施行していない2名ではSVPの変動はなく有意狭窄は認めなかった.

【まとめ】 SVPはAVGの経時的な変化を示唆し,VA管理の向上に有用であった.


■第22回 日本臨床工学会(2012.5) 富山

ユビキタスモジュールを利用した警報送信システム

   第22回 日本臨床工学会 JACE BPA
   BPA 血液浄化部門 優秀発表賞   
受賞
 

第二相模原クリニック、相模原クリニック
○野々山直之,廣瀬隆司,山田 彩,荻野 剛,野田雅顕,喜多村晃仁,石頭郁美,梅澤俊明,銅谷博美,小堀譲也,佐藤貴宣,高橋克幸,鎌田智宏,巽 洋,永岡 隆

【目的】透析療法に不可欠なRO装置、透析液供給装置などの大型装置類が、夜間など職員が不在となる時間帯にトラブルを起こすと、対応の遅れから透析開始時間が遅延することや、透析不能となる危険性がある。 その原因は装置自体の故障だけでなく、停電に起因する場合もあるため、東日本大震災後の計画停電期間は、停電の実施が直前まで予測できずに悩ませられることがあった。 今回、我々はそうした経験から、施設内が無人の場合でも装置の警報と停電情報を迅速に把握する必要性を痛感したため、警報送信システムを作製したので報告する。

【方法】ユビキタスモジュール(以下、UM)とは、自販機の在庫管理などにも利用されている機器に組み込み可能な小型の通信モジュールで、携帯電話回線(NTTドコモ社FOMA)を通じてデータ通信を行うことができる。 このUMに遠隔監視装置を接続し、遠隔監視装置には機械室内にある全ての装置(RO装置、透析液供給装置、A剤溶解装置、B剤溶解装置)から取り出した警報接点を接続して、警報送信システムを作製した。 このシステムは、警報発生時に「○○装置 異常ON」、解除後には「○○装置 異常OFF」という形で登録先のアドレスへEメールを送信し、停電と復電の情報も内蔵されたバッテリーにより送信できる。 UMにはNTTドコモ社製UM02-KO専用アダプタセットを、遠隔監視装置にはiND社製IP3-FP8を用いた。 システムの携帯電波が装置へ及ぼす影響について、FOMAは第三世代なので電波干渉の範囲が狭く、問題ないと考えられたが、アンテナは使用安全距離として装置類から1m程度離して設置した。

【結果】携帯電話の圏内にいれば、機械室内にある全ての装置の警報と停電情報が、即時にEメールで把握できるようになった。 危惧された電波干渉による装置類のエラーはなかった。

【まとめと考察】 警報を通知する装置は各メーカーでも販売されているが、問題点もある。 音声通知をする方式は専用の電話回線が必要となり、Eメールを送信する方式はコンピュータシステムが必要となり、停電時に動作しない装置もある。 今回のシステムはUMを利用するため、専用回線やコンピュータシステムがなくても警報と停電を通知でき、また、構成がシンプルなため、比較的簡単で安価に既存の装置へ設置できるので、設備上の制限がある施設を含め、幅広い施設で使用可能と考えられた。


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■第56回 日本透析医学会学術集会・総会(2011.6) 横浜

コンソール汚染時に対する当院の取組み

相模原クリニック 臨床工学課,第二相模原クリニック 臨床工学課
○野田 雅顕,小堀 譲也,佐藤 貴宣,山田 彩,荻野 剛,喜多村 晃仁,石頭 郁美,
  廣瀬 隆司,高橋 克幸,野々山 直之,鎌田 智宏,巽 洋,久藤 文雄,永岡 隆

【背景】2010年4月より、当院使用中である68台のコンソール入口とカプラ入口から、年間を通して水質検査を実施した。その結果、カプラ入口にてJSDT基準の超純粋透析液レベルを超えるコンソールがあった。

【目的】このコンソールを対象として、生菌数減少にむけた各種消毒方法を検討した。

【方法】透析液供給配管の消毒スケジュールは、週4回過酢酸洗浄後に夜間封入し、さらに週2回シングルパスにて次亜塩素酸Na洗浄を行なっている。汚染時の対処を明確にして迅速に対応できる様、透析液管理体制を整える為に次の方法による消毒を試みた。装置を単独で(1)次亜塩素酸Na、(2)過酢酸、(3)グルタラール製剤の順で消毒した。評価は生菌数検査とエンドトキシン測定にて行った。

【結果】(1)と(2)の方法では生菌数は減少しなかったが、(3)では効果が得られた。発表当日は長期データを加え報告する。


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自動化透析装置導入後、新人研修を経験して

第二相模原クリニック,相模原クリニック
○野々山 直之,廣瀬 隆司,常盤 幸子,浅原 知子,笹原 美代子,相坂 久美子,山田 彩,荻野 剛,野田 雅顕,喜多村 晃仁,石頭 郁美,小堀 譲也,佐藤 貴宣,高橋 克幸,鎌田 智宏,盛本 ちえ子,巽 洋,久藤 文雄,永岡 隆

【目的】当院では生食による自動機能を持つ透析監視装置(TR-3000M)を導入し、業務効率の向上性について2009年の本学会で報告した。導入後、初めて新人研修(看護師1名)を経験したので報告する。

【方法】(1)研修の到達目標は透析周辺の基礎知識を備え、透析準備から終了までの操作(穿刺以外)を1人で行える事とし、新たに研修計画を立案し指導した。(2)研修後に一連の操作に関するアンケートを行った。また、以前に入職した看護師にも同様のアンケートを行った。

【結果】(1)自動化した操作は指導期間が短縮し1ヶ月で目標を達成できた。(2)アンケートから、自動化した操作は負担が軽減したが、操作に対する不安感については解消せず残るようであった。

【まとめ】透析装置の自動化は新人教育にも寄与し、研修の助力にもなると考えられた。



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■第55回 日本透析医学会学術集会・総会(2010.6) 神戸

漢方(四物湯類)は維持透析患者のエリスロポエチン製剤使用量を減らす

医)永光会 相模原クリニック内科,相模原クリニック看護部,第二相模原クリニック内科
○久藤文雄(くとうふみお),盛本ちえ子,巽洋,永岡隆

【目的】維持透析におけるエリスロポエチン製剤(Epo) 使用量には医療経済面からも関心が寄せられている。 演者らは透析患者は東洋医学的には「血虚」の状態にあると弁証し, その基本漢方薬方である「四物湯類」が腎性貧血に有効である可能性を推察し, 同類処方がEpo使用量に影響するかどうかを検討した。

【方法】13人の維持血液透析患者(男性6人)に証に応じた四物湯類を処方し, 投与開始前180日間と投与後180日間のEpo使用量を比較し統計検定を行った。検討期間中, 透析条件は定常を保ち, 特に透析前のヘモグロビン値は10〜11g/dLを目標とした。

【結果】投与前180日間の平均Epo使用量は109,462単位/人であり, 投与後同量は95,500単位/人と有意(p<0.05)に減少していた。臨床症状については, 13例中12例において自覚的に平康から著明な改善を示し, 特に副作用は認めなかった。

【結論】漢方(四物湯類)には維持透析患者のEpo使用量を減らす効果がある。


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夜間RO自動消毒システムを用いた清浄化対策

医)永光会 相模原クリニック臨床工学科
○山田彩(やまだあや),野田雅顕,荻野剛,喜多村晃仁,石頭郁美,廣瀬隆司,高橋克幸,野々山直之,鎌田智宏,巽洋,永岡隆

【目的】ダイセンメンブレンシステムズ社製RO装置SHR-82のRO自動消毒システム(以下自動システム)を導入し、消毒効果を検討したので報告する。

【方法】週2回自動システムにて、ROタンク及びRO供給ラインを次亜塩素酸Na 100ppmで30分間循環消毒する。さらにROタンク内を一度排液し、30ppmで260分封入する。以上の動作に個人用装置の洗浄工程が重なる様に自動運転を設定し、個人用装置入口までの消毒も行った。評価は、消毒前日・消毒翌日・消毒1日後のET測定と細菌培養にて行った。

【結果】自動システム導入後は、ET値・細菌数ともに低減したが、幾つかのポイントでは検出限界未満に至らなかった。

【考察】自動システム導入により、ROタンク及びRO供給ラインの消毒をより簡便に高頻度行える様になった。一方、今後更なる清浄化実現に向けて、薬液濃度や頻度を検討する必要がある。

【まとめ】自動システムは、清浄化対策に有効であるものの、改善すべき点も残っている。



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第20回 日本臨床工学会(2010.5)横浜

東レ社製RO装置 TW−HI極低濃度薬液封入システムの使用経験

医療法人永光会 相模原クリニック 臨床工学科
野々山直之、山田彩、荻野剛、野田雅顕、喜多村晃仁、石頭郁美、小堀譲也、佐藤貴宣、廣瀬隆司、高橋克幸、鎌田智宏、巽洋、久藤文雄、永岡隆

【目的】当院では新施設の開設に伴い、薬液封入機能をもつ東レ社製RO装置TW-HIを2008年9月から導入した。この機能は夜間に自動で極低濃度の次亜塩素酸Naを作製し、RO装置からRO水配管まで封入することで、停滞時の配管内での細菌繁殖を抑える効果がある。今回、我々はこのシステムの使用経験を報告する。

【方法】TW-HIの給水終了後、毎日、透析液供給装置とA・B末溶解装置のRO配管、個人機用ROループ配管に1ppmの次亜塩素酸Naを次回開始まで封入する設定で使用開始した。ほとんどのRO配管はRO装置からの連動により薬液封入可能であったが、当初、個人機は他社製のためループ配管から個人機の間だけが未封入であった。清浄度の評価としてエンドトキシン濃度(ET)測定と細菌検査を行った。ET測定はEG ReaderSV-12で測定し、細菌検査はセンシメディア法で7日間培養とした。サンプリングポイントは、ROタンク、個人機用ループ配管戻り口、個人機給水部、供給装置、末端コンソール入口とした。

【結果】使用1ヶ月後のデータは各ポイントで、ET:0.003〜0.006EU/mL細菌検査は陽性であった。ETの結果とROタンクで細菌検出されたことからシステムに不具合がないか調査したところ、(1)薬液注入ポンプの吐出量が低下していたこと、(2)このシステムは薬液封入設定をONにしても給水しない日は作動しないことが分かり、週3回の稼働だった開院当初は、週3回しか薬液封入ができていなかったことが判明した。ポンプの注入量調整と非稼働日の給水設定を変更し連日薬液封入が行えるようになると、翌月にはET:0.001未満〜0.0013EU/mL、翌々月には全てのポイントでET0.001未満EU/mLになった。細菌検査は、ROタンクとループ配管戻り口で翌月に陰性に、供給装置と末端コンソールでは4ヶ月後に陰性になったが、個人機の結果は変わらなかった。そこで個人機用RO配管の未封入部をなくすために、使用3ヶ月後、給水部にブローバルブを設置し薬液封入ができるようにした。その後、細菌検査は改善が見られ陽性と陰性が混在した結果となったが、全てが陰性とまでには至らなかった。

【まとめ】TW-HI極低濃度薬液封入システムは連日稼働してからは良好な水質を維持した。しかし、他社製の個人機に給水するRO水配管には課題が残った。


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■第54回 日本透析医学会学術集会・総会(2009.6) 横浜

穿刺ミスデータからわかること

相模原クリニック臨床工学科
○喜多村晃仁(キタムラ アキヒト), 小堀譲也, 佐藤貴宣, 山田 彩, 荻野 剛, 野田雅顕, 石頭郁美, 廣瀬隆司, 高橋克幸, 野々山直之, 鎌田智宏, 盛本ちえ子, 久藤文雄, 永岡 隆

【はじめに】当院は2007年7月より穿刺ミスレポートを導入し、穿刺ミスの現状を調査した。

【対象】維持透析患者230名に対して全穿刺者(Dr, Ns, CE)の1年間の穿刺ミス記録を対象とした。

【結果】当院では失敗件数1357件、失敗本数1765本(V側1374>本、A側本)、失敗率1.74%で穿刺ミスが発生した。年間を通して月単位では失敗の頻度に大きな差はない。 しかし週間では曜日が進むにつれ失敗の増える傾向がV側に現れた。また失敗の特徴には集中不足(34%)、穿刺前の「不安」や「わかりづらい」といった違和感(25%)の自覚があった。その違和感を生じた状態では「入りきらない」という事由の失敗が多く、 また失敗後に多くの穿刺者が交代していることから、違和感が生じた患者の穿刺は避けることで穿刺リスクの軽減に繋がる。

【まとめ】穿刺ミスデータから未然に回避が出来る穿刺ミスが存在することが考えられた。


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自動プライミング/返血機能を持つ東レ社製透析監視装置TR-3000Mの使用経験

相模原クリニック臨床工学科
○野々山直之(ノノヤマ ナオユキ), 荻野 剛, 喜多村晃仁, 小堀譲也, 佐藤貴宣, 山田 彩, 野田雅顕, 石頭郁美, 廣瀬隆司, 高橋克幸, 鎌田智宏, 久藤文雄, 永岡 隆

【目的】当院では新施設の開設に伴い、生食による自動プライミング/返血機能を持つTR-3000Mを導入した。その機能の業務への効果を検討した。

【方法】従来の手動方法と自動機能を用いた方法で(1)セッティング(2)プライミング(3)返血に要す作業時間を比較した。

【結果】(1)自動機能用の血液回路は排液ラインがある専用回路で、接続箇所やセット箇所が増える為、作業時間が5割ほど延長した。 (2)自動機能は装置の作動時間を含む全行程では大幅に延長したが、操作者の作業時間は手動方法より短縮した。(3)手動方法は回路固定の解除から動脈側抜針、生食接続までに1分以上掛かったが、自動機能ではその工程が生食を流す間に行える為、要す時間が短縮した。

【結語】R-3000Mの自動機能はプライミングと返血の業務効率を向上させた。特に返血への効果は大きく、患者へ負担を与えずに短時間で行う事が可能になった。


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■第53回 日本透析医学会学術集会・総会(2008.6) 神戸

東レ・メディカル社製HDFフィルタTDF2.0の臨床性能評価

相模原クリニックME科
○荻野 剛(オギノ ゴウ), 石頭郁美, 野々山直之, 野田雅顕, 廣瀬隆司, 高橋克幸, 鎌田智宏, 永岡 隆

【目的】HDF専用フィルタTDF2.0(TDF)を臨床使用にて比較検討した。

【対象・方法】対象は維持透析患者7名、QB=200ml/min、置換量6L・10L 、4時間の条件で後希釈off-lineHDFにてAPS-21SA(APS)とクロスオーバーで小分子量物質(UN・UA・iP・Cr)と低分子蛋白(β-MG、α-MG、Myo) のクリアランス・除去率・除去量・クリアスペース(CS)、Alb漏出量、TMPについて検討した。

【結果】低分子蛋白の除去率は10L置換でβ-MG APS:±2.3%、TDF:74.7±3.0%(p<0.01)、Myo APS:67.9±5.4%、TDF:52.6±4.9%(p<0.01)、 α-MG  APS:23.1±4.2%、TDF:6.5±5.3%(p<0.01)とAPSで有意に高値だった。MyoのCSは有意差がなかった。 Alb漏出量は、6LでAPS:1.59±0.46g、TDF:0.29±0.06g(p<0.001、10LでAPS:2.64±1.03g、TDF:0.36±0.06g(p<0.001)とTDFで有意に低かった。終了直前のTMPは10Lで APS:120mmHg、TDF:130mmHg程であった。

【まとめ】TDFは高い透水性を持ちAlb漏出が微量のHDFフィルタであった。


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■第52回 日本透析医学会学術集会・総会(2007.6) 大阪

RO水の電導度が上昇した例

相模原クリニック臨床工学科
○野田雅顕(ノダ マサアキ), 野々山直之, 廣瀬隆司, 山田 彩, 荻野 剛, 喜多村晃仁, 石頭郁美, 高橋克幸, 鎌田智宏, 永岡 隆

【はじめに】地下水を透析用水として利用するにあたり、若干の経験を得たので報告する。

【経緯】2006年10月に水道水から地下水に切り替えるが、10日後にRO膜出口の電導度が40μS/cmと上昇した。 そこで、一時的に水道水へ戻し、軟水機の樹脂量を40Lから54Lに上げ、再生・逆洗を毎日施工することにより17μS/cmと改善した。

【考察】当院の使用水量は約12.1m3/日である。この場合、樹脂量40Lの軟水機では硬度が70mg/L以下でないとイオン交換の容量を超える事が分かった。 硬度を測定したところ、水道水が46.4mg/Lに対し地下水では93.5mg/Lと高値であった為、処理限界を超え硬水になり、使用し続けるとRO膜にスケールが蓄積して RO装置に悪影響を及ぼすと考えられた。また、溶血事故の原因となるクロラミンの影響については定期的に測定しているが、問題なく経過している。

【結語】地下水に切り替える際はRO装置全体の見直しが必須である。


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■第51回 日本透析医学会学術集会・総会(2006.6) 横浜             

ニードルレス血液回路の長期使用報告

相模原クリニック
○荻野 剛(オギノ ゴウ), 鎌田智宏, 野田雅顕, 野村 哲,喜多村晃仁, 石頭郁美, 高橋克幸, 野々山直之, 永岡 隆


【はじめに】今回、我々は誤穿刺対策としてニードルレス血液回路を2年間にわたり使用したので報告する。

【対象】当院で働いている医療従事者28名(Ns:20名、CE:8名)を対象とした。

【方法】操作性として回路の使い易さ、安全性として回路に関連する事故のそれぞれについて、
回路の導入前後で比較形式のアンケートを行い、 誤穿刺の件数については誤穿刺記録を元に有用か検討した。

【結果】アンケートの結果、回路の導入前後で操作性は向上したが、安全性について回路に関連する事故の件数に大きな変化は見られなかった。 また誤穿刺については、回路導入後から現在まで発生していない。

【考察】回路に関連する事故の件数に変化が見られなかった。原因として回路に関連する事故の殆どは、回路自体の不具合ではなく人為的なものと考えられる。

【結語】誤穿刺対策としてニードルレス血液回路は有用であるが、回路に関連する事故の件数は減少せず、患者への安全性については更なる検討が必要である。


■第47回 日本透析医学会学術集会・総会(2002.7)  東京            

自作ETCFフラッシング機構設置と使用経験

相模原クリニック
○野村 哲(ノムラ テツ), 野々山直之, 喜多村晃仁, 石頭郁美, 高橋克幸, 鎌田智宏,永岡 隆

【目的】ET除去フィルター(以下ETCF)の自作フラッシング機構をコンソールへ設置し、その効果について検討した。

【方法】ETCFは、HD時に全濾過で使用し洗浄時はフラッシングを行うタイプ1、全工程全濾過でフラッシングしないタイプ2を併設した。 改造はタイプ1のみでフラッシング用電磁弁を設置した。ETCFは日機装社製EF-01、ニプロ社製CF-609を外用濾過で使用した。評価期間は6ヶ月、評価項目としてET濃度、圧力損失、膜表面の走査電子顕微鏡写真と付着元素分析により検討した。

【結果】評価期間中タイプ1、2共にトラブルはなく、ET濃度は検出感度以下であった。圧力損失は使用2カ月間でタイプ2ではEF-01で2.0kPa、CF-609では17.5kPa上昇したのに対し、 タイプ1ではEF-01では5.5kPaと上昇したがCF-609では3.0kPaと上昇はわずかであった。

【結論】フラッシング機構を設置する事でETCFは長期に安定した性能を維持できる可能性がある。また今回の改造は比較的シンプルでありながら安全かつ効果的であった。


■第46回 日本透析医学会学術集会・総会(2001.6)  大阪            

透析後採血方法の検討

相模原クリニック
○鎌田智宏(カマダ トモヒロ), 野々山直之, 高橋克幸, 永岡 隆

【目的】再循環(心肺、アクセス)による動静脈の濃度差をなくす透析後の採血方法を検討した。

【対象・方法】(1)水系:再循環回路を作製し尿素溶液(UP)を用い再循環率(RC:%)と血液流量(BF:ml/min)を変化させ、 動脈側(A)とUPの濃度差(Gp:%)をみた。(2)臨床:(a)開始1時間後、心疾患あり,なし(各4名)で穿刺針より血液回路を外しAとシャント反対側(P)のGpをみた。 透析終了後に(b)Aと静脈側を逆接続しRCを高くした場合(13名)と(c)通常の接続をした場合(20名)で、Gpをみた。

【結果】(1)RC=40でGpが消失するのは、BF=100で15分、BF=200で7分であった。(2)0、7分後のGpは、(a)心疾患あり:12.01±5.81、4.78±4.14、 なし:10.73±4.82、2.17±1.12、(b)RC=33.92±8.74で、31.58±8.17、5.82±3.10(c)RC=6.16±4.41で5.61±3.88、0.17±1.50だった。

【考察】(1)よりアクセス再循環の影響はRC=40でも透析液を止めて7分後には消失するが、(2)よりGpの消失は循環動態により差が生じると考えられた。

【結論】循環動態を考慮した上、透析後採血は透析液を7分止めれば濃度差なく行える。



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■第45回 日本透析医学会学術集会・総会(2000.6)  福岡            

透析時間の違いがkt/Vに及ぼす影響について

相模原クリニック
○野々山直之(ノノヤマ ナオユキ)、磯野友昭、佐々木由紀、石頭郁美、三浦真琴、高橋克幸、鎌田智宏、永岡 隆

【目的】透析の高効率化に伴うUrea Rebound、心肺再循環がkt/Vを過大評価させる原因となっている。透析時間の違いがkt/Vに与える影響を検討した。

【対象、方法】内シャントの患者37(4hHD22名、4.5HD15)を対象とした。透析前、透析終了時[回路動脈側(A)と非シャント肢(P)]、終了30分後のBUNよりKt/VRebound率、動静脈血差率を求めた。

【結果】Kt/VRebound率には有意な正相関を認めた。4hHD4.5hHDKt/V(P)1.405±0.2021.556±0.222(p<0.04)Rebound(P)9.32±4.23(%)12.84±3.80(%)(p<0.02)で有意差を認めたが、Rebound(A)20.81±5.81(%)20.69±5.90(NS)で有意差を認めなかった。動静脈血差率は9.43±2.95(%)6.42±2.49(%)4hHDの方が有意に大きかった(p<0.003)

【考察】動静脈血差率は心肺再循環によるものと考えられた。

【結論】透析時間が短くなると高効率化を余儀なくされる為、動静脈血差が増大し、回路からの採血(動脈血)ではUrea Reboundの影響に加えkt/Vを更に過大評価する危険性がある。


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ヘマサイト長期使用の一症例

永光会 相模原クリニック
○盛本ちえ子(モリモト チエコ)、久松悦子、猪野理絵、花田路子、永岡 隆


【目的】日本透析医学会の報告では、199812月現在のヘマサイト使用患者は25名。そのうち、10年以上では4名と少ない。今回13年の長期ヘマサイト使用例を経験したので報告する。

【症例および経過】66才女性、ADL自立。S47年にCRFと診断されHD開始。その後S63年までに外シャント造設1回、内シャント造設7回、グラフト3回施行するも長期使用不可。S637月にヘマサイト作製後は大きなトラブルなく13年目を過ぎた現在も良好な状態を保つ。

【考察及び結論】@患者の自己管理能力が高くHt27.0%、血圧100前後と安定、ヘマサイトの保清保護ができている。Aブラッドアクセスとしてのヘマサイトが良好な為、KT/V1.8前後と高値。B医療者のヘマサイト技術の統一と、患者との連携を密にしている。以上により、13年以上のヘマサイトを使用可能にしたと思われる。その為、現在ヘマサイトは製造中止であるが条件があえば、長期使用可能な優れたブラッドアクセスの一つと言える。


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当クリニックにおけるHCV抗体陽性透析患者の検討

相模原クリニック 東海大学医学部消化器内科1*
○永岡 隆(ナガオカ タカシ)、森野文敏*、白石光一*

【目的および方法】血液透析患者のHCV抗体陽性率が高いことはよく知られているが、遺伝子型分類等についての報告は少ない。HCV遺伝子型分類、HCV RNA定量(CRTPCR法、アンプリコア法)、分岐DNAプローブ法を行い、併せて、血算、生化学、腹部エコー、CT検査、等を施行し検討した。

【結果および考察】今回、当クリニック外来維持透析患者175名中、HCV抗体陽性者は28名(16%)と高率であった。HCVの遺伝子型によるタイプ分類では、1b17名(60.7%)と最も多く、2a3名、2b1名で、分類できない者7名であった。これらの分布は従来の日本人におけるタイプ分類の頻度と同様だった。輸血歴がなく経過中にHCV抗体陽性になった者が1名おり、水平感染が強く疑われた。トランスアミナーゼ値は正常時範囲内でも腹部エコー、CT所見では肝硬変のパターンが認められ、肝細胞癌の治療後が1名おり、早期からの治療が必要と思われた。今後、HCV遺伝子型分類やウィルス量よりインターフェロン療法の効果が期待できる。



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■HDF研究会(2005.2)  新潟      

供給水管理におけるFI値の有用性

相模原クリニック
○野田雅顕(ノダ マサアキ)、高橋克幸、荻野 剛、喜多村晃仁、野村 哲、石頭郁美、野々山直之、鎌田智宏、永岡 隆

【目的】RO装置にて、フィルターが頻回に目詰まりを起こした為、ファウリングの影響を定量化した指数であるFouling Index(以下FI値)を用いて供給水の評価及び管理に有用か検討した。

【方法】定期的に、供給水・一次フィルター(以下 F-@)in・軟水器out・活性炭out・二次フィルター(以下F-A)outからFI値を測定し、供給水・貯水槽T・貯水槽U・F-@in・軟水器out・活性炭outROモジュールoutから細菌検査を行った。

【結果】F-@inからF-Aout間でFI値が高値を示し、細菌検査からも貯水槽V及び活性炭outで細菌が検出された為、貯水槽に欠陥があることが判明し、一部改修工事を行った。その後、軟水器outまでは低下したが、活性炭outF-Aoutでは低下は認められなかった。

【考察】貯水槽Vの細菌検出、軟水器outまでのFI値の高値は貯水槽の水質汚染が原因であると考えられた。また活性炭out以降に関しては、改善が認められず、今後の検討が必要である。

【結語】ROモジュールの負担を軽減させる為、定期的に供給水をFI値にて、管理する事は有用である。